東京エフニブ

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ゆっくり歩く

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Retina Ⅰb Schneidar Xenar 50mm f2.8 Kodak G400 (モノクロ変換)
井の頭公園

再開します。


気温が上がって来た。もうすぐ春の陽気になってくる。

冬から春の光に切り替わる直前の光が好きだ。

だから、写真を撮るために歩く。

写真を撮ること。

いつも楽しい。


ーーー

3.11 あれから5年が経過した。

5年前の3月11日の金曜日。

あの日、自分は机に座って坦々と午後の仕事を行っていた。

週末だったので帰りには、中野のフジヤカメラに寄って帰ろうとぼんやりと考えていた。

その時、ドスン、と椅子が一段低くなたったような感覚の縦揺れが2回起こった。

ああびっくりしたと思う間もなく、次に横揺れが始まった。
揺れはしだいに大きくなって、建物からは軋み音が出始めた。

窓の外を見るために席を立ったら、まともに歩けないほどの揺れだった。

外を見ると、となりの低層のビルが振動している振幅が見えるほどの揺れであることがわかった。

軋み音がさらに大きくなってきたので、同じフロアにいる人たちが皆恐怖を感じ始めていた。

ビルが倒壊するのかもしれない、と強い恐怖が体を走った。

気休めだが、机の下に身を置いた。


揺れが収まった。机の下から出てみる。

ビルの防災センターから、ガラスが落下してくるかもしれないから建物からは出ないように、
との放送があった。

体感した地震の大きさとしては、最も大きなものだと思った。


ワンセグでTVをみると、被害の状況がわかってきた。
都内の交通機関は完全に止まっていた。

夕方になっても鉄道は再開しなかった。
ここで夜を明かすことを考えていたら、500mlの水と乾パンが配られた。

帰ろうか。

実は一週間後には、荒川市民マラソンであるフルマラソンにエントリーしていて、それに向けた
練習をしたので体は十分に仕上がっているから、走って帰ろうと思った。

机の引き出しには、アミノバイタルが2包あったので、このうちの1包を飲みこむ。
これで500mlの水と乾パンがあれば、20キロは越えない距離なので、大丈夫だろうと考えた。

問題は、シューズである。この日は、柔らかい革靴だったのでこれで行けるところまで行こうということにした。


外に出た。

愛用の吉田カバンのストラップの長さを短めに調整してタスキがけにする。

このまま歩いて、最寄りのコンビニに行くと、パンと水は完売していた。
飴とお菓子を買ってから、ゆっくりと走り始めた。

まだ19時過ぎなのに、ほとんど誰も歩いていない。

このままゆっくりと走る。


環状八号線に出た。
歩道を走る。

車道には車はほとんど走っていない。
信号機も消灯したままである。

暑くなってきたので、コートを脱いで丸めて左脇で抱えて走る。

街灯も半分以上が消えていて足元がよく見えないので、車道を走り始めた。
すこしだけ、走りの気分を感じた。


246号線が見えてきた。
信号は消灯していた。

246号線を横断してさらに環八を北上するのであるが、246号では渋谷方面からすごい数の
人が多摩川方向へ向かって歩いていることがわかった。

ほとんどの人が無言だった。

消灯した信号機。

無言で歩く人たち。

この光景は一生忘れないだろうと思う。


246号を超えると、車道には車が増えてきたので、再び歩道を走る。

聴いていたウォークマンは、Carl Anderson の On and on が鳴っていた。

さらに走る。フルに向けて練習した体は柔らかく、革靴からの衝撃を吸収しているな、などと少し
呑気な考えが頭をよぎった。

甲州街道が見えてきた。

246号線の時と同じくらいの量の人々が新宿方面から歩いてきていた。
皆が会話しながら歩いているように見えた。泣きながら歩いている人もいた。


2時間半くらい走ったと思う。

無事に自宅に着いた。


この日に見た風景は、忘れることはないだろう。







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by f2view | 2016-03-20 13:15 | 吉祥寺 | Comments(0)