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東京エフニブ

光景

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SIGMA fp SIGMA 65mm f2 dg dn

地元を歩く。

いつもの古着屋さんで、良い風合いのフランス軍F2ジャケットがあった。よく見ると、この店で自分がかつて売却したものが、長い間売れ残っているものだと思われた。

プライスタグを見ると、売却した時の値段よりも、随分と安い価格が提示されていた。

試着してみると、その日に着ていたヘビーネルのシャツの上に着るアウターとして、とても良いサイズ感だった。
さらに、色合いがオリーブでも茶色に転んでいて、最近の好みの色だったのかと再認識した。

購入することにした。

F2ジャケットは、80年代にリリースされたフィールドジャケットだと言われている。

古着界隈では、70年代よりも古いものがビンテージと言われて価格が高騰する傾向にあるが、80年代以降の古着の価格は安定していて、比較的安く入手できるものが多く、実用で着るにはちょうど良かった。

しかし80年代は、単純にはもう40年も前であった。

80年代かぁ、、あの頃は、、、 。

ーーー

社会人になっていた。

自分は、光ディスクのドライブ装置の開発グループに所属していた。

この光ディスクとは、現在ではもう消滅した技術であると言われている、光磁気ディスクであった。

この当時は、既に音楽CDは実用化されていたが、これは予め記録された情報(音楽)を、CDプレーヤーが、CDにレーザーで光を照射して、その反射光を読み取って音楽データを音源としてアナログ信号に変換し、その下流にあるアンプに供給するというものであり、リードオンリーとしての機能であった。

光磁気ディスクは、ディスクに情報を新たに書き込むことができるライトとしての機能を持たせたリード&ライトの機能を有し、さらに記録密度としては当時のフロッピーディスクの数百倍の記憶保持容量が期待できる、画期的な媒体であった。

構成は、光ディスクとしては、その内部に磁性膜がグルーブを介してらせん状にディスクの中心から半径方向に配置しているものが基本的な形状だった。

ドライブ装置としては、レーザー光を光ディスクの磁性膜へ照射し、この照射された部分が過熱されて温度が上昇し、磁性膜として固有するキュリー点温度に達すると、その磁性膜が予め保持していた磁性が解放され、自由状態になる。

この状態において、装置に設けられている電磁石によって、磁性膜に磁性を印可し、かつレーザーの照射を停止すると磁性膜がキュリー点温度から自然冷却により下降し始める過程で、電磁石によって印可された磁性方向に物性が動く、という動作がおこなわれるものであった。

つまり、磁性膜で光が照射される面が、予めN極になっているとすれば、レーザー光の照射により過熱して、キュリー点で磁界を印可して、この磁界の方向がレーザーを照射しないバージン面の磁界極とは逆の磁界を与えておくと、このレーザー照射面は、S極として保持することができる。

さらにこの現象が生じたとき、カー効果が発生し、このレーザー照射領域が物性的に微小な回転が発生する。
このカー回転角によって、その後に、加熱印可ではなく読み取りの為のレーザー光を照射してみると、レーザーを照射していないバージン面での光の反射光の強度と、レーザー過熱後の磁界反転後の面での反射光の強度が、カー回転角のコサイン成分になるのでバージン面とは異なる、という現象が発生する。

この反射光のそれぞれの強度の差が、データを記録する前、記録した後、ということで0と1のデジタルデータを割り当てることで、記録メディアとして成立する技術であった。

この頃、磁性膜の材料の構成によって、カー回転角が異なり、このカー回転角の大きい方が、記録メディアとしての感度や記録の安定性になる、という論文を読んで、大変興味を持ったが、自分のバックグラウンドは物性ではなく、機械方面での強度や金属表面だったので、この領域ではなく、ドライブ装置の開発を行うグループで仕事をしていた。

この当時の光ディスクは、各社で開発が行われていたが、その記録領域のグルーブの形状や幅が、各社でそれぞれ異なっていた。

そこでドライブ装置としては、各社の光ディスクを読むことができるスペックであることが、当時の最低限の条件であった。

現在では、光ディスクの規格が各社横断で統一され、その形状に基づいてドライブ装置が構成されているが、あの頃はまだ規格化はされていなかった。

そして、レーザー光をディスクの磁性膜へ合焦させるための光学系と、それを光軸方向に駆動するアクチュエーターとを搭載した光学ヘッドを、ディスクの半径方向へ移動させる機構が必要であった。

各社の光ディスクの形状で、例えばグルーブの間隔が異なっていた為、現在では当たり前の技術である半径方向に光学ヘッドを移動させながら、グルーブの数を計測して、光学系の位置を把握する、いわゆるトラックカウントを行うことは、まだ実現していなかった。

そのためドライブ装置内に、ディスクの半径方向の絶対座標系を予め構築している必要があった。

自分は、装置内に、この座標系としてリニアエンコーダーを設けることを検討していた。

この当時は、この装置の中に装備できる大きさのリニアエンコーダーは世の中には存在しなかったので、既存のエンコーダーを分解して検証し、その装置内に配置できる大きさのものを新規に設計した。LEDとその受光素子とスリット板と、エンコーダー板を製作して、装置内に組み込んでみた。

とりあえず、動作が行えるところまでは出来た。

その後、このドライブ装置は、その当時ベンチャー企業だった米国の企業のコンピューター内に装着して、テストしてもらうことになっていた。

しかし、耐久テストとしてディスクの半径方向にヘッドが動いて、データのリード&ライトを繰り返す動作を日夜行っていると、ヘッドの位置精度が特異的にバラツクことが判明してきた。

詳細は、割愛するが、その当時はリニアエンコーダー板はガラス製であるものが主流だった。
自分が設計したものは、コストと耐震性のため、ガラス以外の物も検討していた。

その後、その対策方法を見つけて、対策部品を用意することができた。

自分は、これで一段落だと思っていたら、ボスからは、すでに米国のコンピューターメーカーにドライブ装置を納入しているから、その納入分の装置に関して、アメリカに飛んでレトロフィットを行ってこい、ということになった。

焦った、、、。

しかし幸いなことに、2名の同僚が既に現地に行くことが決まっていて、彼らと一緒に行って良いということになった。
飛行機の切符やホテルは、会社が手配してくれて、ホテルからその相手先企業への移動は、ホテルが送迎に車を用意してくれることまで準備が整った。

自分は、パスポートを持っていないことに気がついた。

焦った、、、。出発の日は、その来週だった。

自分は、観光ではなく公用で、、、に行く、と書かれた紙に社判を押した書類を持って、有楽町の交通会館にあったパスポート申請窓口に行った。この理由書を用いて、短期間でパスポートの発行を行ってもらう予定であった。

窓口で、書類を見せて説明した。
しかし対応してくれた女性は、本当に観光ではないですよね、と何回も尋ねてきた。そして、本人確認として運転免許証と社員証と名刺を提示して、なんとか信用してもらった。

あの時は、紺のリーガルのデッキシューズにマクレガーの白い綿のパンツで、真っ赤なラコステのポロシャツを着ていたので、その風貌から観光目的なのではないか、と思われたのかもしれない。

パスポートの受け取りは、アメリカ大使館だった。


(続く、、、)
















# by f2view | 2024-03-09 23:03 | 東京